CLONE WARSと私の出会い 恋は盲目

最初にCG版クローン・ウォーズを知ったのは、 2007年5月27日ロスのSWセレブレーションIVでお披露目されたSneak Peakのネット公開だったが、お世辞にも出来がよいとは思えなかった。

今見直して出来は変わらないんだけど、実写版を期待していた気持ちからすると、かなりしょんぼりした覚えがある。アソーカたんも出ていなかったしね。(パドメがこれかよ(´Д⊂ヽとなったのは覚えている)

初めて「おおっ」と思ったのは2008年スター・ウォーズ・セレブレーション・ジャパンの時のデイブ・フィロー二監督のPVだった。
(当時はUS公式サイトにもあったのだが、映画クローン・ウォーズ特装版DVDとBlu-ray版に特典として納められている)
デイブ・フィロー二談
スター・ウォーズといえば戦闘シーンだ。第一作のスペースバトル。第二作では氷の惑星での地上戦。第三作の森での戦闘。」「本作でも度肝を抜くシーンをと地上戦をヒントに垂直のバトルを生み出した。」
プリクエル(EP1〜EP3)が軽く無視されてる気がしないでもないが、このクローン・ウォーズ監督の話を聞いた時に「あれ? ちょっと期待出来るかも?」と感じた。


またクローントルーパーに関する言葉で
「彼らにだって個性はある。その個性を表現すれば観客も親しみを感じるはず。彼らの無事を祈りたくなる。」(ここで映像はトルーパーの『衛生兵を呼べ!』と言うシーンになるのだが)
「素顔にも工夫をこらした。ジョージはタトゥやヘアスタイルを提案。レックスは脱色の短髪だ。顔に傷のある兵もいる。」「レックスがアナキンと似ているのは彼らクローンが上官の影響を受けるからだ。だからレックスはやや乱暴で激しい」「個性的なクローンたちが新しく生まれた。観客が彼らの身を案じるのは、もはや彼らが無個性の一団ではないからだ。彼らの戦いを見て死なないでくれと願ってしまうんだ。」


セレブレーションジャパンのメインステージでは幕間幕間にこの二つが延々流されたと思うが、これを見る度に映画クローン・ウォーズへの期待が徐々に高まっていった。


劇場版クローン・ウォーズで嬉しかったのは、プリクエルエピソードで無くなった、いくつかのスター・ウォーズの魅力が復活していたことだ。プリクエルでは、ラストが決まっているが故にストーリーを急がなければならない事情があったし、有能なデザイナーも不足していた。更に監督業が久々だったルーカス自身の衰えもあったと思う。それをうまくまとめるのがプロデューサーの仕事だが、それが【特別編】から参加したリック・マッカラムでは荷が重すぎたわけで。


話を戻して、失われた魅力の一つと言うのは、先に語られた魅力的な戦闘シーンだ。
あれ? プリクエル三部作だって戦闘シーンがあるじゃない? と思われるかもしれないが、戦闘シーンに大事なのは、見ていてそこに危機感を感じるかどうかでは無いだろうか?
クラシックと呼ばれるEP4〜EP6に於いては、物理法則もだいたい私たちの世界と変わらないわけで、EP4でのデススター内部、ルークとレイアがワイヤーでトレンチをぶら下がり渡りきるだけでヒヤヒヤする。EP6でスピーダーバイクが猛スピードで木の間をすり抜ける時も、ぶつかればどうなるか、トルーパーが実践して見せてくれる。
落ちたら死ぬ、ぶつかったら死ぬ、と言う前提が観客と映像との約束としてあるから、戦闘シーンにも意味が出てくるわけだが、なんと劇場版クローン・ウォーズで復活したのは


高いところから落ちたら死ぬ


と言う当たり前の物理的な事だった。
スカウトトルーパーが惑星テスの隠れ家を見つけ(またここで「我々は偵察のプロですから」と言う台詞が泣かせる)崖の上に登ることになるのだが、その前に敵ドロイドが落ちて物理的に粉砕するのをきちんと見せている。落ちればこうなるんだ、と約束事を一つ決めてアクションに挑む。これはTVシリーズ第2話「マレボランス襲来」で同様の手法が使われている。未知の世界であるが故に約束事を決めておくのは大事な事だ。


一方プリクエルでは、EP1のポッドレースでまずその決め事が無く、EP2ではアナキンが軽々崖の上からジャンプしてすたすた歩き、オビワンは高層ビルからまったくひるまず身投げをするわ、スカイダイブしても全く危機感を感じない演出が続き、EP3では宇宙戦艦が傾くと重力制御も関係なく滑り台化し、ムスタファーの溶岩バトルも最後にはタワーが崩壊しようが足場が不安定だろうが関係なく、派手になる画面とは反比例して危機感が薄れていった。
一応クローン・ウォーズも、それら作品との整合性を重視しているので、アナキンは一人ピョンピョン跳びはねてるが、脇を固めるアソーカ・タノやクローン・トルーパー達がその危機的状況を盛り上げてくれる。


そうか。落ちたら死ぬんだ。
と思うからこそ、崖の側面でAT-TEウォーカーが足を浮かせれば「おおっと!」と思ってしまうわけだ。


クローン・ウォーズはプロデューサーも監督もデザインスタッフもすっかり若返って、しかもデイブ監督いわく「まず最初にしたことはSWの世界を理解し愛しているスタッフを確保する事」との事で、昔ファンだった側がスタッフとして投入されているのは想像に難くない。デイブ監督自身もそうだし日本から参加している竹内氏もそうだ。ファン的な意見として「あそこおかしくね?」と思った事を本作で修正していると言う側面もあるだろう。


EP3で宇宙戦艦が傾いて滑り台、と言うシチュエーションは、本作でちらりと映る医療ステーションに、宇宙船が画面垂直にドッキングする事で完膚無きまでに否定された。TVシリーズでも第4話で、アナキンがテスから脱出する時に使っていた「トワイライト」(同型艦?)が、マレボランス側面に横向けにドッキングする。更に第2話で脱出ポッドを収容する時、船内に重力がある描写がさりげなく挿入されている。


デザインワークもかなりリファインされている。デザインが一新したグリーヴァス将軍と、おそらく(デザイン画横の日本語から)リパブリックアタックシャトルは竹内氏の手による物だが、前後の歴史との整合性もとりつつメカとしての説得力も持ち合わせているのがいい。何より本作で変更されて嬉しかったのは、ジェダイスターファイターのR2ユニットの位置だ。EP2のスターファイターデルタ7と、EP3のファイターイータ2は何故かコクピット左側面にR2が鎮座している。その意味がわからなかった。長い歴史の中でEP2のデルタ7、EP3のイータ2だけじゃないのかな。EP1のナブーのスターファイターですら中心の軸線上に設置してあるのに。宇宙空間だけならまだしも、地上にも降りるんだし左右のバランスは均等の方が説得力あると思うんだけどね。(まあナブーファイターには飛び方が前後逆じゃねえの? と言う最大の欠点があるわけだが)


まあそんな事を考えつつ、既に毎週のTVシリーズ、クローン・ウォーズをもの凄く楽しみにしている私がいるのです。第4話は「撃破!マレボランス」マレボランス編3部作の最終章です。マレボランス編だけまとめて1本の映画にしても全然通用する、良エピソードだと思うのですが、さあ皆さんはどう感じますでしょうか。

4/21 (火) 19:00 〜 19:25 NHK BS Hi スター・ウォーズ クローン・ウォーズ 第4話 「撃破!マレボランス」

絵の方はちょっとゴチャゴチャしすぎてしまった。反省。